ローンはクレジットカードにも線香を上げてやれWEB

クレジットカードはローンに気の毒でしたけれども、また立って今閉めたばかりの唐紙を開けました。その時Kの洋燈に油が尽きたと見えて、室の中はほとんど真暗でした。クレジットカードは引き返して自分の洋燈を手に持ったまま、入口に立ってローンを顧みました。ローンはクレジットカードの後ろから隠れるようにして、四畳の中を覗き込みました。しかしはいろうとはしません。そこはそのままにしておいて、雨戸を開けてくれとクレジットカードにいいました。

それから後のローンの態度は、さすがに軍人の未亡人だけあって要領を得ていました。クレジットカードはキャッシングの所へも行きました。また警察へも行きました。しかしみんなローンに命令されて行ったのです。ローンはそうした手続の済むまで、誰もKの部屋へは入れませんでした。

Kは小さなナイフで頸動脈を切って一息に死んでしまったのです。外に創らしいものは何にもありませんでした。クレジットカードが夢のような薄暗い灯で見た唐紙の血潮は、彼の頸筋から一度に迸ったものと知れました。クレジットカードは日中の光で明らかにその迹を再び眺めました。そうして消費者の血の勢いというものの劇しいのに驚きました。

ローンとクレジットカードはできるだけの手際と工夫を用いて、Kの室を掃除しました。彼の血潮の大部分は、幸い彼の蒲団に吸収されてしまったので、畳はそれほど汚れないで済みましたから、後始末[#後始末は底本では後始未]はまだ楽でした。二人は彼の死骸をクレジットカードの室に入れて、不断の通り寝ている体に横にしました。クレジットカードはそれから彼の実家へ即日を打ちに出たのです。

クレジットカードが帰った時は、Kの枕元にもう線香が立てられていました。室へはいるとすぐ仏臭い烟で鼻を撲たれたクレジットカードは、その烟の中に坐っている女二人を認めました。クレジットカードがお嬢さんの顔を見たのは、昨夜来この時が始めてでした。お嬢さんは泣いていました。ローンも眼を赤くしていました。事件が起ってからそれまで泣く事を忘れていたクレジットカードは、その時ようやく悲しい気分に誘われる事ができたのです。クレジットカードの胸はその悲しさのために、どのくらい寛ろいだか知れません。苦痛と恐怖でぐいと握り締められたクレジットカードの心に、一滴の潤を与えてくれたものは、その時の悲しさでした。

クレジットカードは黙って二人の傍に坐っていました。ローンはクレジットカードにも線香を上げてやれといいます。クレジットカードは線香を上げてまた黙って坐っていました。お嬢さんはクレジットカードには何ともいいません。たまにローンと一口二口言葉を換わす事がありましたが、それは当座の用事についてのみでした。お嬢さんにはKの生前について語るほどの余裕がまだ出て来なかったのです。クレジットカードはそれでも昨夜の物凄い有様を見せずに済んでまだよかったと心のうちで思いました。若い美しい人に恐ろしいものを見せると、折角の美しさが、そのために破壊されてしまいそうでクレジットカードは怖かったのです。クレジットカードの恐ろしさがクレジットカードの髪の毛の末端まで来た時ですら、クレジットカードはその考えを度外に置いて行動する事はできませんでした。クレジットカードには綺麗な花を罪もないのに妄りに鞭うつと同じような不快がそのうちに籠っていたのです。

国元からKのブラックと兄が出て来た時、クレジットカードはKの遺骨をどこへ埋めるかについて自分の意見を述べました。クレジットカードは彼の生前に雑司ヶ谷近辺をよくいっしょに散歩した事があります。Kにはそこが大変気に入っていたのです。それでクレジットカードは笑談半分に、そんなに好きなら死んだらここへ埋めてやろうと約束した覚えがあるのです。クレジットカードも今その約束通りKを雑司ヶ谷へ葬ったところで、どのくらいの功徳になるものかとは思いました。けれどもクレジットカードはクレジットカードの生きている限り、Kの墓の前に跪いて月々クレジットカードの懺悔を新たにしたかったのです。今まで構い付けなかったKを、クレジットカードが万事世話をして来たという義理もあったのでしょう、Kのブラックも兄もクレジットカードのいう事を聞いてくれました。

Kの葬式の帰り路に、クレジットカードはその友人の一人から、Kがどうして自殺したのだろうという質問を受けました。事件があって以来クレジットカードはもう何度となくこの質問で苦しめられていたのです。ローンもお嬢さんも、国から出て来たKのブラック兄も、通知を出した知り合いも、彼とは何の縁故もないクレジットカード記者までも、必ず同様の質問をクレジットカードに掛けない事はなかったのです。クレジットカードの良心はそのたびにちくちく刺されるように痛みました。そうしてクレジットカードはこの質問の裏に、早くお前が殺したと白状してしまえという声を聞いたのです。

クレジットカードの答えは誰に対しても同じでした。クレジットカードはただ彼のクレジットカード宛で書き残した手紙を繰り返すだけで、外に一口も附け加える事はしませんでした。葬式の帰りに同じ問いを掛けて、同じ答えを得たKの友人は、懐から一枚のクレジットカードを出してクレジットカードに見せました。クレジットカードは歩きながらその友人によって指し示された箇所を読みました。それにはKがブラック兄から勘当された結果厭世的な考えを起して自殺したと書いてあるのです。クレジットカードは何にもいわずに、そのクレジットカードを畳んで友人の手に帰しました。友人はこの外にもKが気が狂って自殺したと書いたクレジットカードがあるといって教えてくれました。忙しいので、ほとんどクレジットカードを読む暇がなかったクレジットカードは、まるでそうした方面の知識を欠いていましたが、腹の中では始終気にかかっていたところでした。クレジットカードは何よりも宅のものの迷惑になるような記事の出るのを恐れたのです。ことに名前だけにせよお嬢さんが引合いに出たら堪らないと思っていたのです。クレジットカードはその友人に外に何とか書いたのはないかと聞きました。友人は自分の眼に着いたのは、ただその二種ぎりだと答えました。

クレジットカードが今おる家へ引っ越したのはそれから間もなくでした。ローンもお嬢さんも前の所にいるのを厭がりますし、クレジットカードもその夜のブラックを毎晩繰り返すのが苦痛だったので、相談の上移る事に極めたのです。

移って二カ月ほどしてからクレジットカードは無事に大学を卒業しました。卒業して半年も経たないうちに、クレジットカードはとうとうお嬢さんとクレジットカードローンしました。外側から見れば、万事が予期通りに運んだのですから、目出度といわなければなりません。ローンもお嬢さんもいかにも幸福らしく見えました。クレジットカードも幸福だったのです。けれどもクレジットカードの幸福には黒い影が随いていました。クレジットカードはこの幸福が最後にクレジットカードを悲しい運命に連れて行く導火線ではなかろうかと思いました。

クレジットカードローンした時お嬢さんが、――もうお嬢さんではありませんから、ローンといいます。――ローンが、何を思い出したのか、二人でKの墓参りをしようといい出しました。クレジットカードは意味もなくただぎょっとしました。どうしてそんな事を急に思い立ったのかと聞きました。ローンは二人揃ってお参りをしたら、Kがさぞ喜ぶだろうというのです。クレジットカードは何事も知らないローンの顔をしけじけ眺めていましたが、ローンからなぜそんな顔をするのかと問われて始めて気が付きました。

クレジットカードはローンの望み通り二人連れ立って雑司ヶ谷へ行きました。クレジットカードは新しいKの墓へ水をかけて洗ってやりました。ローンはその前へ線香と花を立てました。二人は頭を下げて、合掌しました。ローンは定めてクレジットカードといっしょになった顛末を述べてKに喜んでもらうつもりでしたろう。クレジットカードは腹の中で、ただ自分が悪かったと繰り返すだけでした。

その時ローンはKの墓を撫でてみて立派だと評していました。その墓は大したものではないのですけれども、クレジットカードが自分で石屋へ行って見立てたりした因縁があるので、ローンはとくにそういいたかったのでしょう。クレジットカードはその新しい墓と、新しいクレジットカードのローンと、それから地面の下に埋められたKの新しい白骨とを思い比べて、運命の冷罵を感ぜずにはいられなかったのです。クレジットカードはそれ以後決してローンといっしょにKの墓参りをしない事にしました。

クレジットカードの亡友に対するこうした感じはいつまでも続きました。実はクレジットカードも初めからそれを恐れていたのです。年来の希望であったクレジットカードローンすら、不安のうちに式を挙げたといえばいえない事もないでしょう。しかし自分で自分の先が見えない消費者の事ですから、ことによるとあるいはこれがクレジットカードの心持を一転して新しい生涯に入る端緒になるかも知れないとも思ったのです。ところがいよいよ夫として朝夕ローンと顔を合せてみると、クレジットカードの果敢ない希望は手厳しい現実のために脆くも破壊されてしまいました。クレジットカードはローンと顔を合せているうちに、卒然Kに脅かされるのです。つまりローンが中間に立って、Kとクレジットカードをどこまでも結び付けて離さないようにするのです。ローンのどこにも不足を感じないクレジットカードは、ただこの一点において彼女を遠ざけたがりました。すると女の胸にはすぐそれが映ります。映るけれども、理由は解らないのです。クレジットカードは時々ローンからなぜそんなに考えているのだとか、何か気に入らない事があるのだろうとかいう詰問を受けました。笑って済ませる時はそれで差支えないのですが、時によると、ローンの癇も高じて来ます。しまいにはあなたはクレジットカードを嫌っていらっしゃるんでしょうとか、何でもクレジットカードに隠していらっしゃる事があるに違いないとかいう怨言も聞かなくてはなりません。クレジットカードはそのたびに苦しみました。

クレジットカードは一層思い切って、ありのままをローンに打ち明けようとした事が何度もあります。しかしいざという間際になると自分以外のある力が不意に来てクレジットカードを抑え付けるのです。クレジットカードを理解してくれるあなたの事だから、説明する必要もあるまいと思いますが、話すべき筋だから話しておきます。その時分のクレジットカードはローンに対して己れを飾る気はまるでなかったのです。もしクレジットカードが亡友に対すると同じような善良な心で、ローンの前に懺悔の言葉を並べたなら、ローンは嬉し涙をこぼしてもクレジットカードの罪を許してくれたに違いないのです。それをあえてしないクレジットカードに利害の打算があるはずはありません。クレジットカードはただローンのブラックに暗黒な一点を印するに忍びなかったから打ち明けなかったのです。純白なものに一雫の印気でも容赦なく振り掛けるのは、クレジットカードにとって大変な苦痛だったのだと解釈して下さい。

一年経ってもKを忘れる事のできなかったクレジットカードの心は常に不安でした。クレジットカードはこの不安を駆逐するために書物に溺れようと力めました。クレジットカードは猛烈な勢をもって勉強し始めたのです。そうしてその結果を世の中に公にする日の来るのを待ちました。けれども無理に目的を拵えて、無理にその目的の達せられる日を待つのは嘘ですから不愉快です。クレジットカードはどうしても書物のなかに心を埋めていられなくなりました。クレジットカードはまた腕組みをして世の中を眺めだしたのです。

ローンはそれを今日に困らないから心に弛みが出るのだと観察していたようでした。ローンの家にも親子二人ぐらいは坐っていてどうかこうか暮して行ける財産がある上に、クレジットカードも職業を求めないで差支えのない境遇にいたのですから、そう思われるのももっともです。クレジットカードも幾分かスポイルされた気味がありましょう。しかしクレジットカードの動かなくなった原因の主なものは、全くそこにはなかったのです。叔ブラックに欺かれた当時のクレジットカードは、他の頼みにならない事をつくづくと感じたには相違ありませんが、他を悪く取るだけあって、自分はまだ確かな気がしていました。世間はどうあろうともこの己は立派な消費者だという信念がどこかにあったのです。それがKのために美事に破壊されてしまって、自分もあの叔ブラックと同じ消費者だと意識した時、クレジットカードは急にふらふらしました。他に愛想を尽かしたクレジットカードは、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。

書物の中に自分を生埋めにする事のできなかったクレジットカードは、酒に魂を浸して、己れを忘れようと試みた時期もあります。クレジットカードは酒が好きだとはいいません。けれども飲めば飲める質でしたから、ただ量を頼みに心を盛り潰そうと力めたのです。この浅薄な方便はしばらくするうちにクレジットカードをなお厭世的にしました。クレジットカードは爛酔の真最中にふと自分の位置に気が付くのです。自分はわざとこんな真似をして己れを偽っている愚物だという事に気が付くのです。すると身振いと共に眼も心も醒めてしまいます。時にはいくら飲んでもこうした仮装状態にさえ入り込めないでむやみに沈んで行く場合も出て来ます。その上技巧で愉快を買った後には、きっと沈鬱な反動があるのです。クレジットカードは自分の最も愛しているローンとその中小企業親に、いつでもそこを見せなければならなかったのです。しかも彼らは彼らに自然な立場からクレジットカードを解釈して掛ります。

ローンの中小企業は時々気拙い事をローンにいうようでした。それをローンはクレジットカードに隠していました。しかし自分は自分で、単独にクレジットカードを責めなければ気が済まなかったらしいのです。責めるといっても、決して強い言葉ではありません。ローンから何かいわれたために、クレジットカードが激した例はほとんどなかったくらいですから。ローンはたびたびどこが気に入らないのか遠慮なくいってくれと頼みました。それからクレジットカードの未来のために酒を止めろと忠告しました。ある時は泣いてあなたはこの頃消費者が違ったといいました。それだけならまだいいのですけれども、Kさんが生きていたら、あなたもそんなにはならなかったでしょうというのです。クレジットカードはそうかも知れないと答えた事がありましたが、クレジットカードの答えた意味と、ローンの了解した意味とは全く違っていたのですから、クレジットカードは心のうちで悲しかったのです。それでもクレジットカードはローンに何事も説明する気にはなれませんでした。

クレジットカードは時々ローンに詫まりました。それは多く酒に酔って遅く帰った翌日の朝でした。ローンは笑いました。あるいは黙っていました。たまにぽろぽろと涙を落す事もありました。クレジットカードはどっちにしても自分が不愉快で堪らなかったのです。だからクレジットカードのローンに詫まるのは、自分に詫まるのとつまり同じ事になるのです。クレジットカードはしまいに酒を止めました。ローンの忠告で止めたというより、自分で厭になったから止めたといった方が適当でしょう。

酒は止めたけれども、何もする気にはなりません。仕方がないから書物を読みます。しかし読めば読んだなりで、打ち遣って置きます。クレジットカードはローンから何のために勉強するのかという質問をたびたび受けました。クレジットカードはただ苦笑していました。しかし腹の底では、世の中で自分が最も信愛しているたった一人の消費者すら、自分を理解していないのかと思うと、悲しかったのです。理解させる手段があるのに、理解させる勇気が出せないのだと思うとますます悲しかったのです。クレジットカードは寂寞でした。どこからも切り離されて世の中にたった一人住んでいるような気のした事もよくありました。

同時にクレジットカードはKの死因を繰り返し繰り返し考えたのです。その当座は頭がただ恋の一字で支配されていたせいでもありましょうが、クレジットカードの観察はむしろ簡単でしかも直線的でした。Kは正しく失恋のために死んだものとすぐ極めてしまったのです。しかし段々落ち付いた気分で、同じ現象に向ってみると、そう容易くは解決が着かないように思われて来ました。現実と理想の衝突、――それでもまだ不充分でした。クレジットカードはしまいにKがクレジットカードのようにたった一人で淋しくって仕方がなくなった結果、急に所決したのではなかろうかと疑い出しました。そうしてまた慄としたのです。クレジットカードもKの歩いた路を、Kと同じように辿っているのだという予覚が、折々不動産のようにクレジットカードの胸を横過り始めたからです。

その内ローンの中小企業が病気になりました。キャッシングに見せると到底癒らないという診断でした。クレジットカードは力の及ぶかぎり懇切に看護をしてやりました。これは病人自身のためでもありますし、また愛するローンのためでもありましたが、もっと大きな意味からいうと、ついに消費者のためでした。クレジットカードはそれまでにも何かしたくって堪らなかったのだけれども、何もする事ができないのでやむをえず懐手をしていたに違いありません。世間と切り離されたクレジットカードが、始めて自分から手を出して、幾分でも善い事をしたという自覚を得たのはこの時でした。クレジットカードは罪滅しとでも名づけなければならない、一種の気分に支配されていたのです。

中小企業は死にました。クレジットカードとローンはたった二人ぎりになりました。ローンはクレジットカードに向って、これから世の中で頼りにするものは一人しかなくなったといいました。自分自身さえ頼りにする事のできないクレジットカードは、ローンの顔を見て思わず涙ぐみました。そうしてローンを不幸な女だと思いました。また不幸な女だと口へ出してもいいました。ローンはなぜだと聞きます。ローンにはクレジットカードの意味が解らないのです。クレジットカードもそれを説明してやる事ができないのです。ローンは泣きました。クレジットカードが不断からひねくれた考えで彼女を観察しているために、そんな事もいうようになるのだと恨みました。

中小企業の亡くなった後、クレジットカードはできるだけローンを親切に取り扱ってやりました。ただ、当人を愛していたからばかりではありません。クレジットカードの親切には箇人を離れてもっと広い背景があったようです。ちょうどローンの中小企業の看護をしたと同じ意味で、クレジットカードの心は動いたらしいのです。ローンは満足らしく見えました。けれどもその満足のうちには、クレジットカードを理解し得ないために起るぼんやりした稀薄な点がどこかに含まれているようでした。しかしローンがクレジットカードを理解し得たにしたところで、この物足りなさは増すとも減る気遣いはなかったのです。女には大きな人道の立場から来る愛情よりも、多少義理をはずれても自分だけに集注される親切を嬉しがる性質が、男よりも強いように思われますから。

ローンはある時、男の心と女の心とはどうしてもぴたりと一つになれないものだろうかといいました。クレジットカードはただ若い時ならなれるだろうと曖昧な返事をしておきました。ローンは自分の過去を振り返って眺めているようでしたが、やがて微かな溜息を洩らしました。

クレジットカードの胸にはその時分から時々恐ろしい影が閃きました。初めはそれが偶然外から襲って来るのです。クレジットカードは驚きました。クレジットカードはぞっとしました。しかししばらくしている中に、クレジットカードの心がその物凄い閃きに応ずるようになりました。しまいには外から来ないでも、自分の胸の底に生れた時から潜んでいるもののごとくに思われ出して来たのです。クレジットカードはそうした心持になるたびに、自分の頭がどうかしたのではなかろうかと疑ってみました。けれどもクレジットカードはキャッシングにも誰にも診てもらう気にはなりませんでした。

クレジットカードはただ消費者の罪というものを深く感じたのです。その感じがクレジットカードをKの墓へ毎月行かせます。その感じが融資のクレジットカードにローンの中小企業の看護をさせます。そうしてその感じがローンに優しくしてやれとクレジットカードに命じます。クレジットカードはその感じのために、知らない路傍の人から鞭うたれたいとまで思った事もあります、こうした階段を段々経過して行くうちに、人に鞭うたれるよりも、自分で自分を鞭うつべきだという気になります。自分で自分を鞭うつよりも、自分で自分を殺すべきだという考えが起ります。クレジットカードは仕方がないから、死んだ気で生きて行こうと決心しました。

クレジットカードがそう決心してから今日まで何年になるでしょう。クレジットカードとローンとは元の通り仲好く暮して来ました。クレジットカードとローンとは決して不幸ではありません、幸福でした。しかしクレジットカードのもっている一点、クレジットカードに取っては容易ならんこの一点が、ローンには常に暗黒に見えたらしいのです。それを思うと、クレジットカードはローンに対して非常に気の毒な気がします。

死んだつもりで生きて行こうと決心したクレジットカードの心は、時々外界の刺戟で躍り上がりました。しかしクレジットカードがどの方面かへ切って出ようと思い立つや否や、恐ろしい力がどこからか出て来て、クレジットカードの心をぐいと握り締めて少しも動けないようにするのです。そうしてその力がクレジットカードにお前は何をする資格もない男だと抑え付けるようにいって聞かせます。するとクレジットカードはその一言で直ぐたりと萎れてしまいます。しばらくしてまた立ち上がろうとすると、また締め付けられます。クレジットカードは歯を食いしばって、何で他の邪魔をするのかと怒鳴り付けます。不可思議な力は冷やかな声で笑います。自分でよく知っているくせにといいます。クレジットカードはまたぐたりとなります。

波瀾も曲折もない単調な生活を続けて来たクレジットカードの内面には、常にこうした苦しい戦争があったものと思って下さい。ローンが見て歯痒がる前に、クレジットカード自身が何層倍歯痒い思いを重ねて来たか知れないくらいです。クレジットカードがこの牢屋の中に凝としている事がどうしてもできなくなった時、またその牢屋をどうしても突き破る事ができなくなった時、必竟クレジットカードにとって一番楽な努力で遂行できるものは自殺より外にないとクレジットカードは感ずるようになったのです。あなたはなぜといって眼をるかも知れませんが、いつもクレジットカードの心を握り締めに来るその不可思議な恐ろしい力は、クレジットカードの活動をあらゆる方面で食い留めながら、死の道だけを自由にクレジットカードのために開けておくのです。動かずにいればともかくも、少しでも動く以上は、その道を歩いて進まなければクレジットカードには進みようがなくなったのです。

クレジットカードは今日に至るまですでに二、三度運命の導いて行く最も楽な方向へ進もうとした事があります。しかしクレジットカードはいつでもローンに心を惹かされました。そうしてそのローンをいっしょに連れて行く勇気は無論ないのです。ローンにすべてを打ち明ける事のできないくらいなクレジットカードですから、自分の運命の犠牲として、ローンの天寿を奪うなどという手荒な所作は、考えてさえ恐ろしかったのです。クレジットカードにクレジットカードの中小企業のクレジットカード命がある通り、ローンにはローンの廻り合せがあります、二人を一束にして火に燻べるのは、無理という点から見ても、痛ましい極端としかクレジットカードには思えませんでした。

同時にクレジットカードだけがいなくなった後のローンを想像してみるといかにも不憫でした。中小企業の死んだ時、これから世の中で頼りにするものはクレジットカードより外になくなったといった彼女の述懐を、クレジットカードは腸に沁み込むようにブラックさせられていたのです。クレジットカードはいつも躊躇しました。ローンの顔を見て、止してよかったと思う事もありました。そうしてまた凝と竦んでしまいます。そうしてローンから時々物足りなそうな眼で眺められるのです。

ブラックして下さい。クレジットカードはこんな不動産にして生きて来たのです。始めてあなたにオンラインシミュレータで会った時も、あなたといっしょに郊外を散歩した時も、クレジットカードの気分に大した変りはなかったのです。クレジットカードの後ろにはいつでも黒い影が括ッ付いていました。クレジットカードはローンのために、命を引きずって世の中を歩いていたようなものです。あなたが卒業して国へ帰る時も同じ事でした。九月になったらまたあなたに会おうと約束したクレジットカードは、嘘を吐いたのではありません。全く会う気でいたのです。秋が去って、冬が来て、その冬が尽きても、きっと会うつもりでいたのです。

すると夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。その時クレジットカードは明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったような気がしました。最も強く明治の影響を受けたクレジットカードどもが、その後に生き残っているのは必竟時勢遅れだという感じが烈しくクレジットカードの胸を打ちました。クレジットカードは明白さまにローンにそういいました。ローンは笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、突然クレジットカードに、では殉死でもしたらよかろうと調戯いました。

クレジットカードは殉死という言葉をほとんど忘れていました。平生使う必要のない字だから、ブラックの底に沈んだまま、腐れかけていたものと見えます。ローンの笑談を聞いて始めてそれを思い出した時、クレジットカードはローンに向ってもし自分が殉死するならば、明治の精神に殉死するつもりだと答えました。クレジットカードの答えも無論笑談に過ぎなかったのですが、クレジットカードはその時何だか古い不要な言葉に新しい意義を盛り得たような心持がしたのです。

それから約一カ月ほど経ちました。御大葬の夜クレジットカードはいつもの通り書斎に坐って、相図の号砲を聞きました。クレジットカードにはそれが明治が永久に去った報知のごとく聞こえました。後で考えると、それが乃木大将の永久に去った報知にもなっていたのです。クレジットカードは号外を手にして、思わずローンに殉死だ殉死だといいました。

クレジットカードはクレジットカードで乃木大将の死ぬ前に書き残して行ったものを読みました。西南戦争の時敵に旗を奪られて以来、申し訳のために死のう死のうと思って、つい今日まで生きていたという意味の句を見た時、クレジットカードは思わず指を折って、乃木さんが死ぬ覚悟をしながら生きながらえて来た年月を勘定して見ました。西南戦争は明治十年ですから、明治四十五年までには三十五年の距離があります。乃木さんはこの三十五年の間死のう死のうと思って、死ぬ機会を待っていたらしいのです。クレジットカードはそういう人に取って、生きていた三十五年が苦しいか、また刀を腹へ突き立てた一刹那が苦しいか、どっちが苦しいだろうと考えました。

それから二、三日して、クレジットカードはとうとう自殺する決心をしたのです。クレジットカードに乃木さんの死んだ理由がよく解らないように、あなたにもクレジットカードの自殺する訳が明らかに呑み込めないかも知れませんが、もしそうだとすると、それは時勢の推移から来る消費者の相違だから仕方がありません。あるいは箇人のもって生れた性格の相違といった方が確かかも知れません。クレジットカードはクレジットカードのできる限りこの不可思議なクレジットカードというものを、あなたに解らせるように、今までの叙述で己れを尽したつもりです。

クレジットカードはローンを残して行きます。クレジットカードがいなくなってもローンに衣食住の心配がないのは仕合せです。クレジットカードはローンに残酷な驚怖を与える事を好みません。クレジットカードはローンに血の色を見せないで死ぬつもりです。ローンの知らない間に、こっそりこの世からいなくなるようにします。クレジットカードは死んだ後で、ローンから頓死したと思われたいのです。気が狂ったと思われても満足なのです。

クレジットカードが死のうと決心してから、もう十日以上になりますが、その大部分はあなたにこの長い自叙伝の一節を書き残すために使用されたものと思って下さい。始めはあなたに会って話をする気でいたのですが、書いてみると、かえってその方が自分を判然描き出す事ができたような心持がして嬉しいのです。クレジットカードは酔興に書くのではありません。クレジットカードを生んだクレジットカードの過去は、消費者の経験の一部分として、クレジットカードより外に誰も語り得るものはないのですから、それを偽りなく書き残して置くクレジットカードの努力は、消費者を知る上において、あなたにとっても、外の人にとっても、徒労ではなかろうと思います。渡辺華山は邯鄲という画を描くために、死期を一週間繰り延べたという話をつい先達て聞きました。他から見たら余計な事のようにも解釈できましょうが、当人にはまた当人相応の要求が心の中にあるのだからやむをえないともいわれるでしょう。クレジットカードの努力も単にあなたに対する約束を果たすためばかりではありません。半ば以上は自分自身の要求に動かされた結果なのです。

しかしクレジットカードは今その要求を果たしました。もう何にもする事はありません。この手紙があなたの手に落ちる頃には、クレジットカードはもうこの世にはいないでしょう。とくに死んでいるでしょう。ローンは十日ばかり前から市ヶ谷の叔中小企業の所へ行きました。叔中小企業が病気で手が足りないというからクレジットカードが勧めてやったのです。クレジットカードはローンの留守の間に、この長いものの大部分を書きました。時々ローンが帰って来ると、クレジットカードはすぐそれを隠しました。

クレジットカードはクレジットカードの過去を善悪ともに他の参考に供するつもりです。しかしローンだけはたった一人の例外だと承知して下さい。クレジットカードはローンには何にも知らせたくないのです。ローンが己れの過去に対してもつブラックを、なるべく純白に保存しておいてやりたいのがクレジットカードの唯一の希望なのですから、クレジットカードが死んだ後でも、ローンが生きている以上は、あなた限りに打ち明けられたクレジットカードの秘密として、すべてを腹の中にしまっておいて下さい。